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[米国] 米エネ省 3つのマイクロ原子炉で基本設計契約を締結

2023年11月8日

米エネルギー省(DOE)は10月23日、国内でマイクロ原子炉を開発中のウェスチングハウス(WH)社、ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)、およびスタートアップ企業のラディアント(Radiant)社と、総額390万ドルの基本設計・実験機設計(FEEED)契約を締結した。


この契約金は、DOE傘下のアイダホ国立研究所(INL)内にある国立原子炉イノベーション・センター(NRIC)が提供するもので、NRICのFEEEDプロセスに沿って、WH社のマイクロ原子炉である「eVinci」、USNC社の「Pylon」、ラディアント社の「Kaleidos」の商業化を促進。
具体的にはNRICの新しい「マイクロ原子炉実験機の実証用(Demonstration of Microreactor Experiments=DOME)テストベッド」を使って、3社の設計作業や機器の製造、燃料を装荷した実験機の建設と試験に際し、支援を提供する。


NRICは、INLで30年以上運転された「実験増殖炉II(EBR-II)」の格納ドームを利用してDOMEテストベッドを建設中。
DOEは早ければ2026年にもDOMEテストベッドでマイクロ原子炉の実験機試験を開始する計画で、3社が試験にかける経費を削減してプロジェクト全体のリスクを軽減するなど、これらの開発が一層迅速に進むよう促す方針だ。


DOEのK.ハフ原子力担当次官補は、「今回のFEEED契約により、3社のマイクロ原子炉はさらに一歩、実現に近づいた」と指摘。
「これらの原子炉は、クリーン・エネルギーへの移行を目指す様々なコミュニティに複数の選択肢を提供することになる」と述べた。


WH社の「eVinci」はヒートパイプ冷却式の原子炉で、電気出力は0.2万kW~0.5万kW。
DOEは2020年12月、官民のコスト分担方式で進めている「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」の支援対象に選定しており、7年間に総額930万ドル(このうち740万ドルをDOEが負担)を投じて、2024年までに実証炉を建設する計画である。
今回のFEEED契約による資金で、WH社はINLにおける5分の1サイズの実験機建設計画を策定。
最終設計の決定や許認可手続きに役立てたいとしている。


USNC社の「Pylon」は、第4世代の小型高温ガス炉(HTGR)として同社が開発中の「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」(電気出力0.5万kW~1万kW、熱出力1.5万kW)の技術に基づいている。
MMRよりさらに小型で、送電網が届かない地域や宇宙への輸送が容易。
「Pylon」1基あたりの電気出力は0.15万kW~0.5万kWだが、複数基連結することで出力を増強することが可能である。


ラディアント社の「Kaleidos」は、電気出力が最大0.1万kW、熱出力は0.19万kWの小型HTGR。
遠隔地域のディーゼル発電機を代替するほか、軍事基地や病院、データセンターその他の戦略的インフラ施設に確実にエネルギーを供給。
陸上や海上の輸送のみならず空輸が可能であり、立地点では一晩で設置することができる。


同社のD.バーナウアーCEOは今回の契約締結について、「2026年に『Kaleidos』で試験を行い、2028年に最初の商業炉を建設するという当社のスケジュールが保たれる」と強調。
V.バッギオCOO(最高執行責任者)も、「DOMEテストベッドでの試験では『Kaleidos』の安全性やその他の性能に関する重要データが得られるので、そうしたデータやその分析結果を原子力規制委員(NRC)に提出することで、商業化に向けた許認可手続きが前進する」と指摘した。


(参照資料:DOEWH社ラディアント社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

【情報提供:原子力産業新聞

 

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