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[米国] 米規制委 熔融塩炉実証炉の「ヘルメス」に建設許可発給

2024年1月5日

米原子力規制委員会(NRC)は12月12日、ケイロス・パワー社が開発しているフッ化物塩冷却高温炉「KP-FHR(Kairos Power Fluoride salt-cooled High temperature Reactor」の実証炉「ヘルメス(Hermes)」(熱出力3.5万kW)について、第4世代の原子炉としては初の建設許可を発給すると発表した。


ケイロス社は、テネシー州オークリッジにある米エネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」に建設する計画で、2024年の着工に向けてサイトの最終準備作業を進め、2026年までに同炉を完成させる方針だ。


同社が最終的に建設を目指している商業規模の「KP-FHR」は熱出力32万kW、電気出力14万kWで、冷却材としてフッ化リチウムやフッ化ベリリウムを混合した熔融塩を使用。
燃料にはTRISO燃料を用いるとしており、同炉では固有の安全性を保持しつつ電力と高温の熱を低コストで生成可能になるという。


「ヘルメス」は「KP-FHR」の熱出力を約10分の1に縮小した非発電炉となる予定。
ケイロス社は「KP-FHR」の商業化に向けた段階的アプローチの重要ステップとして、クリーンで安全かつ安価な核熱の生産能力を「ヘルメス」で実証する。
NRCは現在、「ヘルメス」の隣接区域で同炉を2基備えた実証プラント「ヘルメス2」を建設するための許可申請書を審査中で、ケイロス社はこれらのヘルメス・シリーズで得られる運転データやノウハウに基づき、技術面や許認可面、建設面のリスクを軽減。
「KP-FHR」のコストを確実化し、2030年代初頭に商業規模の「KP-FHR」の完成を目指すとしている。


ケイロス社は2018年、「ヘルメス」の建設に向けたNRCとの幅広い申請前協議を開始した。
DOEは2020年12月に同炉を「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」の対象として選定しており、プログラムの実施期間である7年間の総投資額6億2,900万ドルのうち、3億300万ドルをDOEが負担している。


同社は「ヘルメス」の建設許可申請書を、2021年9月と10月の2回に分けてNRCに提出した。
NRCは今年6月に同炉の安全性評価報告書(SER)最終版を完成させたのに続き、今年8月には環境影響声明書(EIS)の最終版を取りまとめた。
NRCの委員4名は、10月19日のヒアリングでこれらの審査報告書が適正であると承認、同日の票決に基づいて建設許可の発給を決めていた。


「ヘルメス」の建設計画に対しては、テネシー峡谷開発公社(TVA)が2021年5月に設計、許認可、建設、運転等でケイロス社に協力すると発表。
テネシー州政府やオークリッジ市、東部テネシー経済審議会なども、同計画への支持を表明している。
ケイロス社のP.ヘイスティングス副社長は、「過去50年以上の間に、米国で水以外の冷却材を使用する原子炉の建設が認められたのは初めて」と指摘。
「ヘルメス」の完成後は運転認可の取得が別途必要になることから、「申請前の協議で築いた信頼関係に基づきNRCとは今後の審査でも協力していきたい」と述べた。


(参照資料:NRCケイロス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)


ウラン酸化物を黒鉛やセラミックスで被覆した粒子型の燃料

 

【情報提供:原子力産業新聞

 

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