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[英国] HALEU製造を計画
2024年1月25日
英国政府は1月7日、3億ポンド(約558億円)を投じて、HALEU燃料※の製造計画を立ち上げると発表した。
欧州では初の試みであり、英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)のC.クティーニョ大臣は、「国内外のエネルギー安全保障にとって極めて重要」と強調する。
HALEU燃料は、現在開発中の次世代原子炉の多くに採用されている新型燃料。
現在、HALEUを大規模に製造できるのはロシアだけである。
今回資金提供により、英国政府はHALEU燃料の国内製造を支援するとともに、2050年までに民生用原子力発電設備を最大2,400万kWまで拡大し、国内電力需要の約25%を原子力でまかないたい考えだ。
加えて、1,000万ポンド(約18.6億円)を投じて英国内において他の新型燃料の製造技術や設備を開発する。
これにより、イングランド北西部の核燃料生産拠点を強化し、地元産業と雇用を促進するほか、長期的な国内核燃料供給体制を確立する。
海外の需要にも応えることにより国際的な連携に貢献するという。
英国では、2030年代初めには先進的モジュール炉(AMR)の運転開始が見込まれている。
AMRは小型モジュール炉(SMR)同様に、小型で構成設備の工場生産が可能であり、建設をより迅速かつ安価にする可能性があるため、英国の原子力復活において重要な役割を果たすと考えられている。
水素や産業用熱の生産など、低炭素発電以外でさまざまに応用される可能性もある。
新型燃料の製造インフラへの支援は英国内外の原子力インフラ整備にも寄与し、世界的なネットゼロ目標の達成に不可欠。
CO2排出量実質ゼロ(ネットゼロ)への移行はエネルギーの価格上昇を避けつつ、世界的な燃料供給の不安定性に起因する価格の乱高下から家計を守り、手頃でクリーンな電力の供給に役立つとしている。
なお、世界の核燃料市場から、特にウラン転換サービスの市場からロシアを締め出し、2020年代末までに英国にウラン転換能力を取り戻すために、政府と産業界は協働している。
ロシアは現在、世界のウラン転換能力の約20%、濃縮能力の約40%のシェアを持つ。
DESNZは2023年7月、国産燃料のサプライチェーン構築を支援する国内8つのプロジェクトに対し、原子燃料基金(NFF)から総額2,230万ポンド(約41.5億円)を拠出すると発表した。
NFFは、英国がウランと核燃料の供給源を多様化させようとする中、英国の原子力事業者が自国産で製造された燃料を使用する選択肢を増やすことを目的としている。
8つのプロジェクトには、米ウェスチングハウス(WE)社の英スプリングフィールドにある同社の原子燃料製造工場の拡張・アップグレードや、HALEU燃料製造の検討を含む多様な燃料製造への支援(1,050万ポンド、約19.5億円)、カーペンハーストにあるウレンコ社のウラン濃縮工場における低濃縮ウランおよびHALEU燃料製造への支援(950万ポンド、約17.6億円)、ニュークリア・トランスポート・ソリューションズ社のHALEU燃料輸送パッケージの開発支援(100万ポンド以上、約1.9億円)、熔融塩炉の国内開発企業のモルテックスFLEX社のAMRであるバーナー・リグなど熔融塩の製造に必要な機器の製造と運転の支援(120万ポンド、約2.2億円)が含まれる。
なお、COP28で英国はあらためて、G7の原子力パートナーと協力し、ロシア製燃料への世界的な依存を減らすというコミットメントを表明した。
※U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン
【情報提供:原子力産業新聞】
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