電気事業連合会
会長会見 2024年4月19日

2024年4月19日に開催した電気事業連合会 会長会見において、弊会会長の林から

についてお話ししました。

新会長としての抱負

まず、1点目、「新会長としての抱負」でございます。
先月、就任のご挨拶でも申し上げましたが、近年、電力やエネルギーを取り巻く環境は大きく変化しています。国内では、電力自由化の進展により、競争環境が拡大する一方で、原子力発電所の稼働遅れや、急激な再エネ増加、あるいは火力の退出等により、供給力不足が常態化するなどの課題が顕在化しております。また世界においては、脱炭素の潮流が進む中で、ロシアによるウクライナ侵攻など地政学上の影響から、燃料確保など、エネルギー安全保障の問題に直面しております。

こうした変革期において、業界が果たす役割は大変大きく、電事連がミッションとして掲げる「電気事業の健全な発展を図り、それにより、我が国経済の発展と国民生活の向上に寄与する」という使命を果たすべく、先導してまいる所存でございます。

今年は重要な課題が続いております。中でも、国の根幹となるエネルギー政策の議論においては、エネルギー基本計画の見直し、電力システム改革の検証が並走します。こうした議論を通じて、現状の課題を再確認し、あるべき姿を追求するため、実務を担う事業者として、検討に最大限協力してまいりたいと考えております。

また、電力各社においては、足元の安定供給はもとより、脱炭素を目指しながら、将来に向けて供給力を確保していく取り組みが大変重要になります。その切り札の一つとして、原子力の最大限の活用が不可欠となりますが、稼働済のプラントの継続的な安全・安定運転、今後予定されておりますBWRプラントの再稼働、そして、バックエンド事業の推進など、取り組むべき課題は多岐にわたります。電事連としては、こうした課題にしっかり対応するとともに、絶え間ない安全性の向上や理解活動に邁進してまいります。

一方、昨年は、独占禁止法遵守に向けた取り組みや、顧客情報の不正閲覧を踏まえ、体制やルール作りなどを進めてまいりました。今月から組織を見直し、新たな体制で、活動をスタートさせましたが、こうした取り組みはもとより、安定供給の使命を果たしていくことの両面において、真摯に取り組みを続けることで、社会の皆さまから信頼をいただけるよう努めてまいります。

電力という財は、産業の発展や国民生活になくてはならない、いわば社会の血液でございます。この電力を、安定的に、少しでも安価にお客さまに送り続けること、そして、カーボンニュートラルを同時達成していくこと、この命題の解決と実現に向け、電事連会長として、電力各社の社長と力を合わせて、業界を盛り立てていきたいと思います。そして、日本のインフラを支える電力業界を、魅力のある業界にしていきたいと考えております。

電力システム改革の検証に対する電気事業連合会としての考え

続いて、2点目として、「電力システム改革の検証」について、事業者としての考えを述べさせていただきます。お手元の資料1をご覧ください。

資料の1ページ、上の枠内に記載したとおり、電力システム改革は「需要家選択肢の拡大」「安定供給の確保」「料金の抑制」を3つの柱として、電力供給に携わる各プレイヤーが、それぞれの役割や責任を果たすことを前提に、これまで推し進められてきました。しかしながら、冒頭でも申したように、エネルギーの安全保障や安定供給に関する新たな課題が、顕在化している状況にもあります。

現状の課題認識を中段の枠にまとめました。1点目として、10年を超える長期的な需要見通しがないため、計画的な電源開発が難しくなってきていること、2点目として、供給力不足が常態化していることや調整力の不足が懸念されること、3点目として、自由化の進展により、短期的な経済合理性の追求が優先され、将来の事業予見性が低下していること、さらに、4点目として、カーボンニュートラルの潮流やエネルギーの地政学的リスクの顕在化による燃料調達の困難化も挙げられます。

こうした課題を抱える中、将来にわたり、電力の安定供給を維持することが難しくなれば、国民生活や企業の経済活動を停滞させてしまうという、強い危機感を持っており、今こそ、電力システムを、より強固にするために必要な見直しをかけていくことが求められます。下段の枠内に課題解決に向けた処方箋として、4つ記載しておりますので、2ページ以降で具体的にご説明いたします。

まず、①として、「長期の需要想定と需給管理機能の向上」です。2050年カーボンニュートラルに向けた電化の進展や、デジタル化への対応等も踏まえると、将来の電力需要は大きく伸びていくものと考えております。こうした蓋然性の高い、現実的な需要想定を前提に、建設リードタイムを踏まえて、必要な供給力の確保や電源構成につなげていくことが重要になります。また、短期的な需給管理の面では、再エネや蓄電池等の増加に伴い、需給構造の把握が困難になってきていることから、電力の品質維持のためにも、分散型電源等も含めた系統全体の需給構造を、適切に把握していくことが必要となります。

次に、②としては、エネルギーの安全保障や安定供給確保の観点から、原子力や既設火力も含めて、電源の多様化を進めることの重要性を掲げております。

GX推進戦略においては、原子力を最大限活用する方針は示されましたが、今年、見直されるエネルギー基本計画においても、原子力の重要性を明確化し、その上で、必要な規模の原子力を確保していくことが必要です。そのためには、既設炉の再稼働はもとより、新増設やリプレースが必要になりますが、その実現にあたっては、自由化の中にあっても、事業期間が長期にわたる原子力への投資予見性を確保できるよう、費用回収やファイナンス支援などの事業環境整備が必要です。

また、火力発電についても同様に、トランジションの観点で、一定の役割を担うことを明確化し、その活用に向けて、必要な事業環境が整備されることが重要になります。

こうした事業環境整備の課題については、3ページの③に「循環型の投資環境整備」として掲げています。安定供給を維持するためには、発電や送配電の設備維持や建設に必要な費用を適切に確保し、電源の脱炭素化などに着実に再投資しうる循環型の枠組みが重要になります。現時点でも、長期脱炭素電源オークションが創設されるなど、一定の取り組みは整備されつつありますが、今後、金利上昇や税率の変更など、長期的な不確実性にも対応しうる制度への改善が必要です。それにより、設備投資の予見性を確保し、株主や金融機関の皆さまに投資判断をご納得いただけるような、利益の創出につながる事業環境整備が求められます。

また、公平・公正な競争環境の整備と需要家保護の両方の観点から、最終保障料金や経過措置料金、供給義務のあり方などについて、検討する必要があると考えております。特に、経過措置料金については、燃料価格が機動的に料金へ反映できないといった課題があり、競争環境の阻害要因にもなっていることから、その存続の是非も含めて、見直しを早期に検討する必要があると考えております。

最後に、④は、「安定的な資源や燃料の確保」です。大部分の資源を海外からの輸入に頼っている日本において、エネルギー安全保障上の施策として、発電事業者においては、契約手法や調達先の多様化など、安定的な燃料調達に努めてまいりますが、権益の確保や上流開発、供給途絶リスクに備えた余剰燃料の確保などについては、国や公的機関による主体的な資源・燃料確保策の推進をお願いしたいと考えております。

また、安定供給の実現に向けて、予見性を確保する上では、LNGを、長期にわたり安定的に調達することが重要であり、小売事業者との長期相対契約の促進につながる制度設計など、とりうる選択肢を広げることも、有効になると考えております。加えて、カーボンニュートラルの同時達成のために、水素などの導入支援制度の拡充も期待しております。

以上、電力システム改革の検証について、事業者としての考えを申し上げてまいりました。冒頭にも申し上げましたが、電力は、産業の発展や国民生活になくてはならないものです。電力を、安定的に、少しでも安価にお客さまに送り続け、将来の我が国の経済と国民の生活を支えていくためには、持続的な電力システムの再構築が必要であり、実務を担う事業者としても、最大限、今回の検証に協力してまいります。

本日、私からは以上となります。

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