電気事業連合会
会長会見 2024年5月17日

2024年5月17日に開催した電気事業連合会 会長会見において、弊会会長の林から

についてお話ししました。

エネルギー基本計画の見直しに向けた業界としての考え

まず1点目のエネルギー基本計画の見直しについては、お手元の資料1をご覧ください。
1ページの上のリード部分に記載しましたように、エネルギー基本計画は、わが国のエネルギー政策の羅針盤となるものであり、国の経済と国民の暮らしを支える政策として、責任ある議論を、丁寧に進めていく必要があると思います。
お手元の資料では、事業者として考える重要な論点と期待事項を、項目ごとに整理しておりますので、時間をいただきまして、順を追って、ご説明させていただきます。

①は、「将来の不確実性を見据えたシナリオの設定」です。2050年カーボンニュートラルに向けた電化の進展やデジタル化により、電力需要は大きく伸びていく可能性が高いと考えております。将来にわたり供給力を確保し続けるためには、蓋然性の高い、現実的な需要想定にひもづいた設備形成や電源構成を、建設リードタイムも踏まえながら、構築することが必要です。

一方で、需要見通しや脱炭素技術の進展など、将来の趨勢を決め打ちすることは難しい面もありますし、来年2月のNDCの提出では、非常に野心的な目標設定が予想されます。このように、将来的な不確実性がある中でも、実効的な需要想定やエネルギーミックスの構築につながるよう、複数のシナリオを設定するなど、柔軟な検討が有効になるものと考えております。

②は、「安定供給とエネルギー安全保障の重要性」です。地政学リスクの高まりによる燃料調達への影響や、稼働率低下により火力発電の休廃止が進むなど、投資回収の予見性の低下が電源投資の停滞を招いています。経済と国民の暮らしを守るためにも、安定供給とエネルギー安全保障の重要性を明確にした上で、電源の建設や維持管理、燃料調達にかかる予見性を確保し、投資を促す制度措置の構築が必要だと考えます。先月は、新たな取り組みとして、長期脱炭素電源オークションの第一回落札結果が公表されました。本オークションは、容量市場とともに、固定費回収に向けた重要な制度となりますが、継続的な改善や充実化を図り、より実効性を高めていくことが、必要になると考えております。

③以降は、個別の電源種ごとに整理しております。

まず、③の再エネについては、脱炭素に大きく貢献する国産電源として、引き続き、私どもも最大限の導入に努めてまいります。そのためには、安定供給と経済性も考慮しつつ、適切な系統整備や、費用負担の在り方を考えていくことが重要です。

2ページに移りまして、④は、原子力発電の活用です。GX戦略においては、安定供給とカーボンニュートラルの両立に向けて、「最大限の活用を図る」方針が示されました。一方、現行のエネルギー基本計画においては、「依存度を可能な限り低減する」とされております。この表現を見直し、既設炉の再稼働はもとより、新増設やリプレースの必要性も明記するなど、位置付けをより明確化していただきたいと思います。そして、その具体化に向けて、初期コストが大きい投資へのファイナンス支援や、継続的なコスト回収が適切にできるような制度措置の構築が必要になっていくと考えています。さらには、長期に及ぶバックエンド事業における官民の役割分担や、原賠法の見直しも検討課題になってくると思います。

次に⑤は火力発電です。安定供給に必要な供給力を確保する観点はもとより、再エネ拡大に不可欠な調整力を確保する上でも、火力発電は、大変重要な役割を担っています。まずは、既設火力の位置付けも含め、火力発電を一定程度の規模で、維持していく方針を明確にすることが必要です。もちろん同時に、水素・アンモニア等、脱炭素燃料を混焼する火力発電をトランジション電源として位置付け、カーボンニュートラルの実現に向けた役割を明確化することが重要です。

⑥は、需要側の取り組みです。CO2排出量の6割は民生・運輸・産業部門からであり、脱炭素化に向けては、大気熱を利用したヒートポンプの活用など、電化の推進が決め手となります。高度化法では再エネとして定義されている大気熱を、次期エネ基においても、再エネとして位置付けていただき、ヒートポンプ機器の普及促進を図ることで、エネルギー自給率の向上に結び付けていくことが重要であります。

最後の⑦は、GX実現に向けたコスト負担に関する環境整備です。今後、GX戦略の償還財源として、カーボンプライシングの導入が予定されています。仮に、その負担の多くを、発電事業者が担うことになると、電気の利用者がメリットを享受しにくい状況となり、「受益と負担のバランス」を欠くことになります。例えば、電気料金による負担が過度に増えることで、脱炭素化に大きく貢献する電化の促進自体を阻害してしまうということは、避けなければならないと考えております。制度設計にあたっては、「受益と負担のバランス」を確保し、国民全体で、公平、かつ、適正に負担しうる仕組みが必要です。そのためには、国民の皆さまの理解を得た上で進めていくことが肝要であり、国においては、そうした理解醸成をお願いしたいと思います。

以上、エネルギー基本計画の見直しに向けて、いろいろと申し上げてまいりましたが、こうした施策を展開していく上では、経済合理性の観点も忘れてはなりません。脱炭素化を進めると、将来のエネルギーコストは確実に高まります。コスト負担の在り方も考えながら、どのような手段を選択していくかを、判断していく必要があります。
今後、エネルギー基本計画の見直しに向けた、大切な議論が本格化していきますが、実務を担う事業者としても、検討に最大限協力し、意見をしてまいりたいと思います。

玄海町における「特定放射性廃棄物の最終処分に係る文献調査」受け入れ表明

次に、玄海町における「特定放射性廃棄物の最終処分に係る文献調査」の受け入れについて申し上げます。

このたび、玄海町の脇山町長が、特定放射性廃棄物の最終処分に関して、文献調査を受け入れる旨を、表明されました。

文献調査については、最初に受け入れていただいた、寿都町と神恵内村において、調査報告書案の議論が行われているところでありますが、次に続く自治体が、なかなか出てこない状況が続いておりました。こうした中で、このたび、玄海町がご英断をいただいたことは、大変ありがたいことと、受け止めております。関係する皆さまに対して、心より敬意を表します。

特定放射性廃棄物の最終処分は、必ず解決しなければならない重要な課題であり、将来に負担を先送りしないよう、我々の世代で解決に向けた対策を確実に進めることが必要であります。そうした中で、文献調査の対象地域が拡大することは、全国的な議論を喚起し、理解を深めていく上で、非常に大きな意義があるものだと、考えております。

現在、電力会社は、国やNUMOと連携し、合同チームを組んで自治体訪問を行っています。昨年度は100以上の自治体の首長の方を訪問していることが、特定放射性廃棄物小委員会において、報告されております。

我々、事業者としては、特定放射性廃棄物の発生者として基本的な責任を有する立場から、国、NUMOと連携しながら、地域の皆さまとの対話活動などを継続してまいります。そして、最終処分事業に理解を深めていただき、少しでもご関心をお寄せいただけるよう、取り組んでまいりたいと考えております。

本日、私からは以上となります。

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