電気事業連合会
会長会見 2024年11月15日

2024年11月15日に開催した電気事業連合会 会長会見において、弊会会長の林から

についてお話ししました。

東北電力女川原子力発電所2号機の再稼働とその意義

まず1点目でございます。先日、東北電力女川原子力発電所2号機が、2010年11月の停止以降、2011年3月の東日本大震災を経まして、13年ぶりに原子炉を起動しました。ご存じのように、その後、中性子の検出器を校正する器具の不具合もありましたけれども、安全を最優先に作業を続けて、今週、改めて原子炉を起動し、再稼働に向けて準備を進めているところであります。

これまで、東北電力ならびに協力会社等の皆さまにおかれましては、東日本大震災後の厳しい環境や混乱の中で、復旧活動にあたってこられたと思います。女川原子力発電所は、震災が発生した際には、地域の皆さまのために、避難されてきた方々を発電所内の体育館に受け入れるなど、地域の皆さまとも、共に震災を乗り越えられてきた発電所であると伺っております。

そして、その後も新規制基準等への的確な対応、着実な安全対策に係る取り組みを進めてきた結果、今回の原子炉起動に至ったものと思います。東北電力ならびに協力会社等の皆さまには、改めて敬意を表したいと思います。また、なにより、宮城県、女川町、石巻市ならびに周辺自治体の関係者の皆さまのご支援とご理解にも、心から、感謝申し上げたいと思います。

今回、東日本大震災を経験した沸騰水型軽水炉、いわゆるBWRプラントが、震災後初めて、起動しました。また、長期間、停止していた発電所が再稼働を果たすということは、業界としても、大変、感慨深く感じております。そして、東日本における電力の安定供給確保はもちろん、地域の復興等の観点からも、大変意義深いものであると受け止めております。

東北電力におかれましては、引き続き、地域の皆さまのご理解を得ながら、発電所の再稼働および営業運転に向けた工程を、一歩一歩着実に進めていただきたいと考えております。また、12月には中国電力の島根原子力発電所2号機の原子炉起動も予定されております。電力業界としても、今後、再稼働を目指すプラントについて、再稼働加速タスクフォースの活動を通じて、早期の再稼働につなげてまいりたいと考えております。

今夏の需給振り返りと今冬の需給見通し

次に、2点目でございます。今夏と今冬の需給について申し上げたいと思います。先日、電力・ガス基本政策小委員会が開催されまして、今夏の需給の振り返りも踏まえた、今年度の冬の電力需給対策が取りまとめられました。

この夏の状況を振り返りますと、安定供給は、なんとか維持できたものの、端境期の6月後半から7月前半には需給ひっ迫融通指示が出された他、9月、10月には、東京エリアにおいて作業停止計画調整の要請も出されました。また、9月20日には、北海道・東北エリア以外の事業者に対して、自家発電設備の焚き増しの依頼も発出されるなど、電気をご利用いただく皆さまには、大変ご心配をおかけいたしました。

現時点の見通しで、この冬の電力需給については、全ての広域ブロックで、予備率11%を超えておりますが、発電所のトラブルや需要の上振れ等も考えられます。事業者としては、引き続き、緊張感をもって適切な設備保全や燃料確保に努めるほか、需要面ではDRの普及拡大やエネルギーの効率的な使用を呼びかけていくなど、需給両面で最大限の取り組みを続けていきたいと考えております。

また、2025年度につきましては、夏、冬ともに安定供給に最低限必要な予備率3%以上を確保できる見込みであります。しかし、予備率に余裕のないエリアもございます。今後も需給ひっ迫が懸念される中、女川原子力発電所2号機の再稼働や、今後、予定されている島根原子力発電所2号機の再稼働は、供給力の確保という面でも、非常に意義があります。さらには、原子力の再稼働を進めることは、供給力、いわゆるkWの面のみならず、電力量kWhの面でも、安定供給を確保していく上で、大変重要であると考えております。

ロシアによるウクライナ侵攻や、不安定な中東情勢は、現在も継続している状況であります。そのため、原子力の再稼働を進めることは勿論のこと、LNG等の燃料確保も、並行して進めなければ、日本の安定供給を維持することは困難です。

先日、国の議論において示された「LNG政策の考え方」では、事業者主導で確保を行う「競争領域」、事業者間や官民の協調が必要な「協調領域」、また、稀頻度リスクへの備えとして、政府が主導して確保の目途をつける「有事対応領域」など、3つの領域が整理されました。事業者としては、これまでも、長期契約と短期・スポット契約の組み合わせによるポートフォリオの最適化や、調達契約における数量の柔軟性の確保など、燃料調達に向けた様々な取り組みを続けております。

しかしながら、有事への備えとして、国や公的機関による主体的な資源・燃料確保が必要であると考えております。また、燃料転換や他の電源の動向等により、LNG需要が大きく変動する可能性のある点については、安定調達に向けた国の支援が必要であると考えております。今回示されました「LNG政策の考え方」は、こうした事業者の考えを、明確に後押ししていただけるものと考えており、確実に進めていただくことを期待しております。

最後に、先日の衆議院選挙を経て組閣された新政権について、改めて一言申し上げたいと思います。
我が国は、国内経済、外交問題、少子高齢化といった様々な課題が山積している状況にあります。また、世界に目を向ければ、アメリカの政権交代等もあり、エネルギーを取り巻く情勢も目まぐるしく変化してきております。そのような中でも、我が国も、柔軟に取り組み、しっかりと経済成長を果たしていかなければなりません。

現在、エネルギー政策については、GXと安定供給の同時実現に向け、エネルギー基本計画の見直しが進められるなど、大変重要な局面にあります。
電力需要が伸びていく蓋然性が高い中、発電所建設にはリードタイムが必要であります。将来の供給力確保は、まったなしの状態です。さらには、技術力やサプライチェーンを維持していく政策の方向性を決める、ギリギリのタイミングであると考えております。
エネルギー政策は、国民生活や経済活動の基盤を支える、国の根幹をなすものです。資源に乏しい我が国においては、再生可能エネルギーの推進、原子燃料サイクルを含む原子力発電の安全を大前提とした最大限の活用、火力発電の高効率化や技術開発による脱炭素化等、バランスの取れたエネルギーミックスを実現することが極めて大切であります。

また、鉄鋼業界や通信業界など、多くの電力を消費する日本を支える企業からも、カーボンニュートラルを達成するためには、原子力による大量の脱炭素電源が必要だという切実な願いも届いております。

GX実現に向けた国の議論では、原子力発電の安全を大前提とした最大限の活用が掲げられておりますが、次期エネルギー基本計画においても、新増設・リプレースを含めた原子力の最大限の活用を、国として明確にする必要があると考えております。

第二次石破内閣においても、GX実行会議等で示された方針をしっかりと継承し、実効性あるエネルギー政策を実現していただくことを期待しております。

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