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2025年6月20日に開催した電事連会長定例記者会見において、弊会会長の林から

2025年度の電力需給状況と中期的な供給力確保

についてお話ししました。

2025年度の電力需給状況と中期的な供給力確保

本日は、2025年度の電力需給状況と中期的な供給力の確保について、 申し上げます。参考として、パワーポイントの資料を配布しておりますので、ご覧ください。

まず資料の1ページをご覧ください。先月の国の審議会において、2025年度の夏の電力需給の見通しが示されました。3月時点の見通しと比べて、補修計画の変更などの最新の運転計画の反映により、予備率が若干低下したエリアはありました。それでも、安定供給に必要となります予備率3%以上はしっかりと確保できております。

しかしながら、今週も、端境期の高気温により、関東エリアで広域予備率が想定以上に厳しくなりました。今後も、大規模電源のトラブル停止等による供給力の低下や、厳気象による需要の上振れが生じた場合には、需給がひっ迫する可能性もございます。

また、資料2ページで示しました年間のEUEもご覧ください。EUEでございますが、Expected Unserved Energyの略で、年間で、供給力が不足することにより停電がどれだけ発生する可能性があるのかを示すものであります。数値が低いほど、停電が発生しにくいこととなり、目標とする数値が設定されています。

表中、赤枠で示しましたが、2025年度の東京や九州エリアにおいては、この目標値を上回っております。事業者としましては、端境期や夏の高需要期に向け、引き続き、緊張感をもって、供給力確保を万全なものとしていきたいと考えております。

なお、国民の皆さまに対して、今夏の節電要請は実施しませんが、最新機器の導入や、使い方の工夫など、無理のない範囲での効率的なエネルギーの利用をお願いいたします。

その上で、次に、中期的な供給力確保について、触れさせていただきます。EUEを見ていただくとわかるとおり、2027年度以降も供給力が不足する懸念が継続しております。

資料の3ページをご覧ください。先日、広域機関の「将来の電力需給シナリオに関する検討会」において、将来の電力需給の概算バランスが示されました。表の右側が、2050年の概算バランスです。脱炭素化がなされた火力発電へのリプレースが行われないと、全てのケースで供給力(kW)が不足することが示唆されております。

また、需要が最も伸びるシナリオ、すなわち、需要12,500億kWhのシナリオになりますが、全火力発電所のリプレースが行われても供給力が不足しています。これは既設の原子力発電所の60年運転に加えて、60年を超過した原子力が、全てリプレースされたとしても、供給力、つまりkWが不足するという結果であります。将来、安定供給が損なわれる可能性があるということで、大きな危機感を持って、受け止めております。

将来に向けては、需要が拡大するシナリオを念頭にしまして、必要な供給力を確実に確保することが必要であります。そのためには、脱炭素電源への投資回収の予見性や、既設電源の維持に係る費用回収の予見性を確保することが大事です。先月の会見でも申し上げましたが、長期脱炭素電源オークション等の各種政策の制度設計に、このシナリオ検討結果を反映していただくことを、強く期待しています。

一方、新規の電源建設のリードタイムを踏まえると、適切に既設電源の供給力も確保していくことが重要となります。現在、日本全体で必要な供給力(kW)を効率的に確保する仕組みとして、容量市場が設けられております。

特に、高効率石炭火力をはじめとする既設火力は、今後の再エネ導入拡大や、当面の脱炭素電源へのトランジション期において、安定供給に欠かせない存在です。そのための供給力を調達する役割を果たすのが、容量市場となります。将来の供給力確保や、既設電源の維持に係る費用回収の予見性を確保するには、この見直しも必要であると考えております。

資料の4ページをご覧ください。右下の赤枠で囲った表に容量市場の現状の課題と必要な対応を整理しました。まず供給力確保の面からは、今後、需要が増加することが想定されるなか、目標とする調達量が適切な水準かどうかが重要となります。目標調達量のベースとなる需要想定の精度を向上させること、また、再エネの導入拡大に必要となる調整力も含めた供給力を確保することなどが求められます。

次に価格面については、既設電源を確実に維持できる価格水準を追求することが重要です。現在、容量市場のオークションの価格水準を決める価格指標として、10年前の発電コスト検証WGの数値が用いられています。足下では、賃上げや急激な物価上昇により電源の維持費用が増加しております。実態に即した指標価格の設定が急務であると考えております。

現在、広域機関が主体となり、容量市場の制度主旨を果たすための仕組みの再確認や、機能性向上等を目的に、包括的な検証が実施されております。

実務を担う事業者としても、今後の議論を注視するとともに、日本全体で必要な供給力を確保できる制度とするため、意見募集や実態調査等を通じて、意見してまいりたいと考えております。

また、国におきましては、先日、「電力・ガス基本政策小委員会」が「次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会」に改組されました。その下に置かれました「電力システム改革の検証を踏まえた制度設計WG」において、今後の電力システムの構築に向けて、必要となる制度措置の検討が開始されております。

検討項目には「安定供給を大前提とした既設火力の位置付けの明確化」や、「小売事業者による量的供給力の確保の在り方」など、供給力確保に関する論点が示されております。

今後、具体的な施策の検討が進んでいくと思いますが、顕在化している課題への対応は待ったなしです。計画倒れになることのないよう、スピード感をもって、実効性の高い政策展開が期待されます。事業者としても、検討に最大限、協力してまいります。

最後に、お手元に資料もお配りしておりますが、俳優の今田美桜さんにご出演いただいたテレビCMとwebムービーを紹介させていただきます。

今回のテレビCMでは、「これからも、ずっと電気と。」というメッセージを表現し、何気ない日常において、家族と電気の温もりを感じられる内容となっております。その中で、「原子力」と「再生可能エネルギー」を最大限に活用し、「火力」の脱炭素化にも取り組みながら、各電源のバランスのよい活用を進めていることを紹介しています。

また、webムービーでは刑事に扮する今田さんが緊迫する捜査シーンの中でエネルギーの話をする、シチュエーションとテーマのギャップが面白い内容となっています。「エネルギーミックス篇」と「ヒートポンプ篇」の2本立てで、電事連ホームページやSNSで配信しておりますので、是非ご覧ください。

私からは以上となります。