電気事業連合会
会長会見 2024年9月20日

2024年9月20日に開催した電気事業連合会 会長会見において、弊会会長の林から

についてお話ししました。

エネルギー基本計画の見直しについて重要となる論点

まず、1点目、エネ基の見直しに向けて重要となる論点ですが、いよいよ、議論も本格化し、様々な関係者のヒアリングが進められております。電事連としましても、8月末から9月上旬にかけて、いくつかの国の審議会で、業界の考え方を説明する機会をいただきました。5月の会見では、エネ基の見直しに向けた業界の考えについて網羅的にお話させていただきましたが、本日は、至近の審議会でご説明した論点を中心に、改めて意見を申し上げたいと思います。お手元には、審議会で説明した資料を配布しておりますので、ご参考にご覧ください。

まず、原子力についてでございます。
今後、電力需要が伸びていく可能性が高い中で、将来の安定供給とGXの両立に向けて、あらゆる選択肢を排除することなく、できうる全てのことを進めていかなければならないと考えております。その中で、現実的で有効な解の一つになるのが原子力の有効利用であります。

安全を最優先とした再稼働、そして、自由化の中で、新増設やリプレースなど、長期にわたり原子力事業を営んでいくためには、事業継続の予見性を確保する必要があります。次期エネ基におきましては、原子力の持つ価値を再評価して、国として原子力の位置付けを明確に示していただきたいと思います。その上で、将来の電力需要を見据えて、必要となる原子力の規模を確保していくため、さらには、原子力事業者やサプライチェーンを担うメーカーの技術あるいは人材の確保といった観点からも、国として具体的な原子力の開発・建設目標量を掲げることが、是非とも必要だというふうに考えております。
一方で、原子力を進めていく上では、自由化以降の投資・コスト回収の予見性の低下や、資金調達環境の悪化といった様々な課題も生じてきております。こうした現状に対して、継続的なコスト回収の仕組みや事業収益性の確保、投資インセンティブにつながるような、ファイナンス環境の整備が必要と考えております。

また、極めて長期にわたるバックエンド事業における官民の役割分担の検討、あるいは諸外国では例を見ない、無過失・無限責任を前提とした原賠法の見直しも必要であると考えております。

これらの課題を解決し、事業の予見性が確保されることで、原子力の安全、安定稼働を実現することが期待できます。これにより「安定供給」「環境適合」「経済合理性」という3つのEの価値を高めることになり、ひいては、原子力発電が、国民の皆さまの生活や、我が国の産業競争力の強化に、大きく貢献することができると考えております。

続いては火力であります。火力は、安定供給に必要な供給力や調整力を確保する観点はもとより、再エネを拡大していくためにも、大変重要な役割を担っております。まずは、そうした火力の有する役割を明確化する必要があると考えております。

また、火力を適切に活用していくためには、安定的な資源確保も重要となります。kWh確保の方です。現在、戦略的余剰LNGの運用開始等、課題認識に基づく対応策が進みつつあります。私は大きな前進だと考えておりますが、将来の安定供給に向けては、燃料の長期契約確保に係る具体的な方策や、国によるさらに主体的な燃料確保策の推進が必要と考えております。

勿論、事業者としても、非効率火力のフェードアウトを進め、長期的には火力発電の脱炭素化を目指していきますが、当面の間は、火力発電をトランジション電源として位置付け、一定程度の規模で維持していく方針を明確にした上で、水素やアンモニア、CCSといった技術の開発を着実に進めていくことが、国益にかなうものだと考えております。

次に、コスト負担の在り方についても触れたいと思います。カーボンニュートラル実現に向けては、相応の脱炭素コストの負担は避けられません。GX実行会議では、この10年間に150兆円超の官民GX投資を実現する方向性が示されました。さらには、カーボンニュートラルに対する国際公約と、我が国の産業競争力強化や経済成長など、国民の豊かさも同時に実現していくことが求められます。

その手段として、成長志向型カーボンプライシングにより、排出削減を促進する制度が検討されております。この議論の中では、排出量取引や有償オークションの導入が検討されておりますが、導入にあたっては、事業活動への影響や投資の予見性確保など、国民生活への影響も踏まえた制度設計とすることが重要です。

9月3日に開催された、GX実現に向けたカーボンプライシング専門WGの中で、電事連からも3つの意見を申し上げました。具体的には、参考資料3の最後、右肩26ページや27ページに記載しておりますのでご覧いただければと思います。

1点目は、「電化の推進と整合的なカーボンプライシングの制度設計」です。GXに伴うコストについては、国民の皆さまの行動変容を促す観点からも、広く社会全体・国民全体で負担していかなければなりません。現在、行われている第2フェーズに向けた議論においても、企業間や業種間の公平性を確保するという方針が示されております。

その先の第3フェーズにおいては、GX移行債の償還財源として導入される、カーボンプライシングの負担の多くが、発電事業者に対する有償オークションで賄われる見込みとなっております。仮に、負担が特定の事業者に偏ることになると、例えば電化の進展を阻害し、脱炭素化の取り組みそのものに悪影響が生じることが予想されます。今後の第2フェーズの議論の場においては、第3フェーズも見据えて、公平性の観点や、事業の予見性の観点を考慮した制度設計を検討することが必要であると考えております。

2点目は、「既存政策との関係整理」、整合性です。電気事業には、高度化法に基づく非化石電源比率の達成義務や、省エネ法における火力発電効率のベンチマーク指標等、今後導入されるカーボンプライシングと、効果・目的が重複する制度が併存しております。これまでの制度も含めて、全体として整合性が取れるよう、関係を整理いただく必要があると考えております。

3点目は「GXに伴う追加負担に対する理解醸成」です。GXはエネルギーや経済の姿を変え、我々のくらしを変える大変革であります。大きなコスト増を伴う現実から目を背けてはなりません。GXを通じて国民の皆さまが受ける利益と、それに伴う負担について、国が率先して国民の皆さまの理解の醸成を図ることが、実効性を高めることつながると考えております。

以上、本日は、至近の委員会の場で説明した内容をもとに、改めて、業界の考えを、お伝えさせていただきました。今後、エネ基の見直しも佳境に入ってまいりますが、我々、実務を担う担当者としても、引き続き、検討に最大限協力してまいりたいと考えております。

日本原燃再処理工場の新たなしゅん工目標達成に向けた取り組みの強化

次に、日本原燃再処理工場の新たなしゅん工目標達成に向けた取り組みの強化について申し上げます。

ご案内のとおり、このたび日本原燃が再処理工場しゅん工目標を変更しました。昨日は、日本原燃において、お手元に配布した資料1のスライド2ページに記載のとおり、体制強化等を公表しております。私ども、電事連としても、今回の件を重く受け止めており、日本原燃の早期しゅん工に向けた支援を一層、強化してまいりたいと思います。

具体的には、資料のスライド1ページをご覧ください。2022年9月に設置したサイクル推進タスクフォースの仕組みにより、電力各社から専門知識を有する人材の派遣や、技術面、マネジメント面で、日本原燃の審査対応の支援を強化してまいりました。その結果、至近の審査では進展をみる等、一定の成果が得られてきたと考えております。引き続き、この制度、仕組みを活用し、最大限の支援を継続してまいりたいと思っております。

加えて、経営層への関与を強化いたします。ポンチ絵の上の赤枠部分にありますように、電事連役員と記載しておりますが、原則として、電事連常勤トップの副会長が、日本原燃の経営会議にオブザーバーとして参加いたします。そして、審査や工事等の進捗を適宜確認することで、日本原燃の経営層に対して、必要な指導や助言等を直接行う等、コミュニケーションを強化してまいります。

先ほど、テーマ1の中でも申し上げましたが、資源に乏しい我が国のエネルギー事情や2050年カーボンニュートラル実現を踏まえると、原子力発電は今後とも重要な電源として活用していく必要があると考えております。その上で、原子燃料サイクルは、原子力の安定稼働、資源の有効活用、また廃棄物の減容化等の観点から極めて重要であります。引き続き、安全を最優先に、一層、日本原燃の取り組みをオールジャパンで支援してまいりたいと思います。

本日、私からは以上でございます。

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