7. 電力自由化動向

全面自由化で競争激化

電力自由化は1990年から段階的に進められ、1999年以降、家庭用を含めたすべての需要家が電力の購入先を自由に選択できるようになっている。小売供給事業者は、価格の割引競争のほか、産業用需要家に対してはオーダーメードサービス、また家庭用需要家に対しては、ガスと電力のセット供給、オンライン契約、長期価格据え置き契約等様々なメニューを用意し需要家獲得競争を展開している。この結果、全ての産業用需要家は供給事業者の変更や契約の見直しを、また、家庭用需要家も半数以上が供給事業者の変更を経験している。

上記の需要家獲得競争により近年、大手6社に対する独立系事業者の小売市場シェアも徐々に伸びてきている。2017年9月時点の政府統計によれば、独立系事業者が獲得した家庭用需要家シェアは約2割となり(英国の需要家総数は約2,800万軒)、需要家保護の観点から市場競争の促進を重要視してきた政府は、これを好意的に捉えている。独立系事業者の多くは、標準的な世帯におけるガス・電気のセット(Dual-Fuel)契約でビッグ6を下回る料金やクリーンエネルギーを提示している。

電気料金は上昇

電気・ガス料金は、2003年以降の世界的なエネルギー価格の高騰や国産ガス(北海ガス)の生産量の減少等を背景に急騰した。また、自由化の進展とともに、発電会社が燃料のスポット調達の割合を増加させていることも電気料金の上昇に拍車をかけている。近年、輸入ガス価格等により料金が低下する傾向も見られるものの、2016年のビッグ6の需要家が年間に支払った電気・ガス料金の平均は1,123ポンドと、2006年比で約1.2倍(電気)と1.5倍(ガス)上昇している。そのため、冬季に十分な暖房を確保することができない世帯(エネルギー貧困世帯)が急増し、その数はイングランド地方で250万世帯(2015年)に達し、全世帯のうち約11%を占めている。このような情勢の中、政府は弱者対策の一環として、25万軒以上の需要家を持つ電気・ガス事業者に対して、低所得者層への料金を割引く制度を導入している。

「電力市場改革」で再エネ、原子力開発を支援

前述のように、英国政府は近年、再エネ、原子力、CCS付石炭火力等低炭素電源へシフトするエネルギー政策を掲げている。

しかし、現行の卸電力取引制度(BETTA)は、1990年代以降の自由化万能主義を反映したもので、近年の、より環境保護を重視する方針に沿ったものではない。そのため、強力な奨励施策が導入されない限り、開発コストが高いこれら低炭素電源は、市場から締め出されることになる。

このような状況を受けて、政府は2011年7月、これらの電源の開発支援を目的とした「電力市場改革」(EMR: Electricity Market Reform)を打ち出した。同年11月にはEMRの実施を盛り込んだエネルギー法案が議会に提出され、約1年の審議を経て、2013年12月、「2013年エネルギー法」が制定された。EMRは、現行の卸電力取引制度の枠組みはそのまま残しながら、卸市場に低炭素電源を導入する強いインセンティブを組み込むべく、以下の4つの施策の導入を進めている。

① 低炭素電源からの固定価格買取制度(FIT-CFD)の導入:
再エネのほか、原子力やCCS付石炭火力等も対象。CFDは変動するスポット価格のリスクをヘッジするために使われる金融派生商品。FIT-CFDはこの手法を用いて買取価格を固定化する仕組み。買取期間は、再エネに対して15年、原子力に対して35年となっている。再エネの買取価格(行使価格)は政府により設定され、原子力の買取価格の設定は個別案件となる。2014年10月に開催された第一回CFD分配ラウンドでは、太陽光、陸上風力、洋上風力、コージェネなどの電源に政府予算を超過した申請があり、オークション方式で進められることとなった。第二回分配ラウンドは、2017年9月に開催され、太陽光と陸上風力が対象から外れ、洋上風力の行使価格が第一回と比べ半額となった。第二回では最終的に、11件の再エネプロジェクト(運開時期が2021~2023年度のものが対象)に対してCFD契約が締結された。第三回ラウンドの開催は2019年春に予定されている。

② CO2排出価格の下限値(CPF)の設定:
政府が設定するCO2排出価格の下限値(CPF:Carbon Price Floor)とEU排出権の見通し価格(先物価格の平均)との差額が英国独自のCO2排出価格(CPS:Carbon Price Support)として上乗せされる。これは、EU排出権価格が低迷した際にCO2を多量に排出する火力発電所の投資回収が進む一方で、低炭素電源への投資が停滞することを抑制するための制度である。火力発電所に掛かるコストを一定以上に保つことで、相対的に低炭素電源のコストを低くし、優位に立たせる。CPFは2013年4月1日に導入された。

③ 新設火力のCO2排出基準の設定:
新設火力のCO2排出基準値を年間で450g/kWhに設定するもの(実際には、450g/kWhを基準値とする年間排出上限量で規制される)。これにより、石炭火力はCCSの設置を伴わなければ基準値を満たすことが困難となる。同基準は、2013年エネルギー法の条項に基づき、2014年2月18日以降に政府から建設許可を受けた、またはボイラのリプレースメントを実施した火力設備へ適用される。

④ 容量市場制度(CM:Capacity Market)の導入:
再エネ電源の大量導入によって、ガス火力等一般電源の設備利用率が低下し、それらの電源への設備投資が不足することで、安定供給が確保されないという懸念が残る。これを回避するために導入されたのがCMである。CMは設置した容量(kW)に対して一定の報酬を支払うもので、これにより設備利用率が低くても一定の利益が確保できる。対象となる容量および報酬額(決済価格)はオークションによって決定される。2018年1月に開催されたオークション(2021~2022年冬期の供給力確保)では、5,041万kWの容量提供契約が締結され、決済価格は8.40ポンド/kW/年となった。これは、2016年12月のオークションの行使価格22.50ポンド/kW/年を大幅に下回るものである。

2013年エネルギー法の制定を受けてEMRは現在、各項目についての諸規則を設定しており、2014年から段階的に導入を進めている。
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