5. 電源開発状況

近年は再エネが飛躍的に増加

イタリアの総発電設備容量は2016年時点で、1億1,142万kWである。内訳は、火力6,243万kW(全体の56%)が最も多く、次いで水力2,218万kW(同20%)、太陽光1,928万kW(同17%)、風力938万kW(同8%)、地熱77万kW(同0.6%)となっている。

前述のように、イタリアは水力を除いてエネルギー資源の賦存に乏しいことから、原子力開発を進めてきたが、その原子力開発も2度の国民投票で現在、停止するに至っている。そのため、イタリアの電源の中心は火力であるものの、近年は再エネ電源の開発が進んでいる。

2016年における発電電力量の44%はガス、15%は水力、23%は水力以外の再エネ(内訳:太陽光8%、風力6%、地熱2%、バイオマス・廃棄物ガス7%)である。その他、石炭が12%、1%は石油、5%はその他燃料である。

2011~2016年の期間では太陽光(651万kW増)と風力(247万kW増)の設備容量は増加しているが、在来型電源を含めた総発電設備容量は428万kW減少している。これは、債務危機による電力消費の落ち込みや急増する再エネ電力に押される形で、発電量の減少が続く火力設備が廃止されていることによるものである。火力は建設計画の延期または停止が相次ぎ、2016年まで新規の運開設備は予定されていない。

なお、国家エネルギー戦略(SEN)の草案段階では2030年に48~50%と提案されていた再エネ電力比率が、石炭火力発電の段階的閉鎖による供給力の穴埋めのために、最終的には55%に引上げられている。

火力はガス火力の比重が圧倒的

火力電源ではガス火力が主流である。北部にアルプス山脈がそびえ、細長い半島中央をアペニン山脈が南北に走っているイタリアでは、発電所建設の適地は限られている。冷却水の確保が可能な海岸地帯では観光事業が盛んであり、さらに地方分権化が進んでいることから、電源立地に対して地元の合意が困難な状況にある。こうしたことから電力自由化以降、新たに建設される火力設備は地元に受け入れられ易いガス火力、なかでもコンバインド・サイクル設備が圧倒的に多い。2002年から2012年までに政府が建設許可を発給した火力発電設備建設計画、約2,369万kW(改造分を含む)のうち、石炭火力計画2件を除き、すべてガス火力が占めている。

石炭火力は2025年までに段階的閉鎖へ

イタリアでは2017年末現在、798.2万kWの石炭火力発電所が運転されており、2016年には国内総発電量2,960億kWhの13.5%に相当する400億kWh弱を賄った。

石炭火力は最新鋭設備で環境対策が十分になされていても、地元の同意が得にくい状況にある。2012年までの石炭火力計画のうち、唯一完成にこぎ着けることができた大手電力会社Enelのトッレ・バルダリーガ・ノルド発電所の場合、国の許可発給にもかかわらず、地元州政府がガス火力への転換を求め、工事中止命令を出すなどして建設が中断し、完成が5年遅れた。同じくEnelのポルト・トッレ石炭火力発電所計画は、CCSの設置が予定されていたにもかかわらず、環境保護団体が訴えた裁判において許認可手続き上の瑕疵を理由に建設許可が取り消された結果、Enelは2015年1月に同発電所の建設計画の廃止を決定している。

脱炭素対策として、2017年の国家エネルギー戦略(SEN)では草案段階で石炭火力の取り扱いについて3通りのシナリオ(①設備の停止を市場機能に任せるシナリオ:約200万kWが停止、②政策的な介入により停止設備を増加させる部分停止シナリオ:約500万kW停止、③完全停止シナリオ:約800万kW停止)が提示され、停止時期については2025年までと2030年までの2案が検討事項とされた。パブリック・コメントでは「完全停止シナリオ」支持が大多数を占め、停止時期も2025年への賛成が多かったことから、最終的にはこれが採用されることになった。
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