卸市場を自由化
前述のKEPCOの発電部門の分割と同時に、2001年に卸電力市場が創設され、韓国電力取引所(KPX)も設立された。この卸市場は、KPXによって運営されるコストベース・プールに基づいた強制市場であり、基本的に発電事業者は全て市場に参加する。ただしKPX設立以前にKEPCOと電力売買契約を結んだIPP、あるいは再エネ事業者は市場への参加は任意である。系統運用はKEPCOの送電部門が行っている。KPXが前日に作成した1時間毎の発電量に基づき、事前に登録した発電事業者の中から発電コストが安い事業者を選定し、選定した事業者に運転指令を出している。
また、独立規制機関として、韓国電力委員会(KEC)が設立された。同委員会の主要な任務は、①電力市場の運営に関する基準の施行と電気事業者の認可(事業ライセンス発行)、②公平な競争の促進、③消費者利益の保護、④電力市場の監視、⑤電気事業の再編などである。
電気料金は、発電部門は卸電力市場により市場価格が反映される。一方、KEPCOの小売料金は認可料金であり、料金改訂には政府の認可が必要である。
改革実施当初は料金低下
前述のように、2001年頃の電気事業改革後も総発電設備容量(2015年)の75.1%をKEPCOの発電子会社が占める一方、IPPは13.3%、再エネ事業者は3.1%を占めるに過ぎない(残りの8.5%は卸電気事業者)。しかし、小売電気料金は2004年までは家庭用が3年連続、一般用も2年連続で値下げが実施され、併せて用途別・料金単価の格差是正が行われた。これは、電力改革以前に締結したLNG長期購入契約などのおかげで燃料価格が低く抑えられたこと、供給予備力に余裕があったため電力設備の開発費が抑えられたことで、卸価格が低下傾向を示したためである。
2008年以降、値上げ不足でKEPCOは赤字を計上したが、2013年から黒字に転換
しかし、一転して、2005年以降は値上げが続いている。燃料価格の高騰や電源開発費の増大などを反映し、2012年8月までに合計7回にわたり値上げが実施された。しかもこのような度重なる値上げにも係らず、政府の介入によって値上げ幅が小幅に抑えられてきたため、2008年以降、2012年末までKEPCOは赤字計上を強いられていた。その後、政府はKEPCOの赤字の原因である燃料価格の高騰や為替変動による購入電力費の上昇を小売料金に反映させるべく、数回に亘り7%程度の電気料金値上げを認可したため、KEPCOは2013年以降の決算で黒字を計上することになった。また、累積赤字に関しても、KEPCOの本社移転(2014年12月にソウル市・三成洞から南部の全羅南道・羅州市に移転)に伴う本社ビル売却により、大幅に減額された。なお、2011年に導入するはずであった燃料費調整制度に関しては、政府が消費者保護の観点から導入を延期している。
続く停電の懸念
また、この政府によって低く設定された電気料金によって、多くの需要家がエアコンを冷房に加えて暖房用にも使用するようになり、冬季の最大電力を引き上げる要因となっている。その結果、発電所の定期点検期間が春と秋に限定され、夏季や冬季に電力不足に陥るリスクが高まっている。2011年9月には、多数の発電所が定期点検に入る中、突然気温が上昇し、供給力不足により合計5時間に及ぶ輪番停電が実施された。こうした状況を改善するため、政府は、2011年から夏季と冬季にビルの温度規制を実施するとともに、大口需要家に電力需給調整の強化を指示するなど非常時電力需給対策を実施しているが、その後も予断を許さない状況が続いている。