4. 原子力開発動向

世界第5位の原子力発電国

ロシアは核保有国として第二次大戦後、早期から原子力発電開発に着手し、世界初の原子力発電所の運転を手掛けた。原子力発電所は、エネルギー戦略的観点から主に欧ロ地域に建設された。化石燃料生産の中心地がウラル以東のシベリア地域などの開発条件の厳しい地域へ移動するに従い、電力の大消費地である欧ロ地域に化石燃料を輸送する代わりに原子力発電所を建設するほうが経済的とされたためである。その結果、2016末年現在、9カ所の原子力発電所で原子炉30基が運転中で、設備容量は2,674.1万kWと世界第5位の原子力発電国となっている(出力1.2万kW以下の小型原子炉を除く)。

ロシアで開発された発電用原子炉は、主に加圧水型軽水炉(PWR、ロシアではVVERと呼ばれる)と軽水冷却黒鉛減速炉(LWGR、ロシアではRBMKと呼ばれる)の2炉型であるが、高速増殖炉(FBR、ロシアではBNと呼ばれる)の開発も早期から手がけ、現在も開発が続けられている。加圧水型炉17基(VVER-440が5基、VVER-1000 が12基、計1,427.7万kW)、軽水冷却黒鉛減速炉・大型炉(RBMK-1000)11基(1,100万kW)のほか、高速増殖炉 2基(BN-600、60万kWおよびBN-800、86.4万kW)が運転されている。また、至近では2017年以降、ノボボロネジ原子力発電所6号機(VVER、120万kW)、ロストフ原子力発電所4号機(VVER、100万kW)が新たに運転を開始している。

原子力部門は国有機関ロスアトムが統括

原子力部門は、2007年に連邦原子力庁(Rosatom)をもとに国家原子力コーポレーション・ロスアトム(State Atomic Energy Corporation Rosatom)が設立され、ロスアトムを頂点とする事業体制が確立された。ロスアトムは軍事核部門も含めた原子力部門全般を統括しており、民生原子力部門については、2007年7月に設立された国有持株会社「アトムエネルゴプロム社」(Atomenergoprom:AEP)が統括している。AEPの傘下に原子力発電会社ロスエネルゴアトム(Rosenergoatom 、1992年設立、2008年9月株式会社化)や原子燃料会社TVELなどが存在する。こうした事業再編は輸出対応の組織整備の側面もある。

福島事故後も原子力開発推進

2011年3月の福島第一原子力発電所事故を受けて、原子力発電所の安全評価が国内独自および国際的支援に基づく検証の形で実施された。EU仕様に基づくストレステストは同年7~8月に行われ、その結果、過酷事象に対するロシアの原子力発電所の設計上の防護・耐及性が実証されたとしている。ロスエネルゴアトム社は、こうした結果を踏まえ、長中期の対応を含む追加安全措置を引き続き講じるとともに、以降、国内外で新たな原子炉の建設を継続している。

政府は2017年に2035年までの電力施設計画を承認した。計画では二つのシナリオが用意されており、2035年までの国内の原子力発電設備の新規運開は、基本シナリオにおいて2,140万kW、最少シナリオにおいて1,770万kWと想定されている。基本シナリオでは、120万kW級のロシア型加圧水型炉17基が2035年までに建設・運開するとされているほか、極東地方において、海上浮体式原子力発電所の建設・運開も見込まれている。

原子力設備の輸出にも積極的に取り組んでいる。国外での発電所建設プロジェクトには、クダンクラム(インド)、アックユ(トルコ)、オストロヴェツ(ベラルーシ)など数多くの計画がある。
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