7. 電力自由化動向

卸電力市場の自由化とISO/RTO の設立

1992年エネルギー政策法により、公益事業持株会社法(PUHCA)の規制を適用免除された新たな発電事業者区分として、適用除外卸発電事業者(EWG)という独立系発電事業者(IPP)が規定された。これにより卸目的で発電事業を営むEWGは、事業形態および地理的活動範囲において自由に発電施設を所有、運転し電力を販売することが可能となり、卸発電市場が全米大で実質的に自由化されることになった。

連邦エネルギー規制委員会(FERC)は、卸電力市場における更なる競争促進を図るべく1996年に「オーダー888・889」を発令し、送電部門と発電部門の機能分離および送電線の第三者利用者への開放を電力会社に義務付けるとともに、送電線の非差別的利用を保証するための情報ネットワークの構築も義務付けた。

FERCの「オーダー888」では、系統運用の効率化と中立性確保の観点から独立系統運用者(ISO)の設立が推奨され、いくつかのISOが設立された。これらには従来から存在したタイトな(給電指令機能など拘束力のある運用協定を持つ)パワープールを前身として設立されたISOニューイングランド(ISO-NE)、ニューヨークISO(NYISO)、PJM-ISOがあった。FERCはさらに1999年12月に「オーダー2000」を発令し、ISOの不備を補完する形で地域送電機関(RTO)と呼ばれる広域系統運用機関の設立を電気事業者に要請した。その結果、米国では現在まで7つのISO/RTOが設立され、このうちISO-NE、PJM、MISO、SPPの4機関がRTOとしてFERCの承認を得ている。

米国の現在の卸電力市場は、地域によって2種類の市場構造に大別される。一つは、電力取引が供給事業者間で直接交渉され、組織化されていない個々の送電線所有者を通して給電計画が策定される相対取引をベースとする市場で、南東部、南西部、西部山間部、北西部などにおいて主流の形態である。

もう一つは、広域にわたりすべての送電施設を運用制御するISO、あるいはRTOといった広域系統運用機関によって組織的取引市場が運営されている市場で、北東部、中部大西洋地域、中西部、テキサス、カリフォルニアなどで主流の形態である。これらの地域の大部分の州では小売市場も自由化され、競争の拡大が図られている。米国の電力の約3分の2はこれらISO/RTO のカバーする地域で消費されている。

小売市場自由化は州単位

小売市場が自由化されている、いないにかかわらず、いずれの州においても最終消費者に供給される電力は、卸電力市場(独立系発電事業者や組織的卸電力市場)からの購入か、電気事業者の自社発電、あるいはその二つの組み合わせによって調達される。

小売市場が自由化されていない規制州では、電気事業者は州規制当局による伝統的な報酬率規制を受ける。小売需要家は地元電気事業者以外の小売事業者を選択することはできない。またこれら電気事業者の大部分は発送配電施設を保持する垂直統合形態をとっている。

小売電力市場の自由化、競争導入は州単位で進められており、当初は最大24州およびワシントンDCで自由化実施に関する法律が成立したり、規則が制定されたりした。しかしその後、2000年から2001年にかけてカリフォルニア州で電力危機が発生し、同州は2001年9月に小売競争を中断した。アーカンソー州およびニューメキシコ州は、一旦成立した自由化法を廃止した。オクラホマ州およびウェストバージニア州は、自由化実施を無期延期とし活動を中止した。

その結果、2018年3月現在、全米50州のうち、小売全面自由化を実施しているのは13州およびワシントンDCである。このほかオレゴン、ネバダ、モンタナ、バージニア、ミシガン、カリフォルニアの6州は大口需要家に限定した部分自由化を実施中である。カリフォルニア州は2010年に家庭用以外の需要家を対象に小売自由化を再開したが、自由化の上限枠を自由化中断前の水準に設定している。またミシガン州は2008年に自由化法を改正して、自由化枠を電気事業者の前年の販売電力量の10%に限定する変則的自由化を実施している。

広域系統運用機関(ISO/RTO)が設置されている地域および垂直統合体制を維持している地域の市場構造図はそれぞれ下記の「電力供給体制」に示す通りである。

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