6. 電気事業体制
Enelの発電部門はシェアを50%に制限
従来、イタリアの電力供給は発送配一貫の国有電気事業者Enelが中心となり、独占的に行われてきた。しかし、電力自由化によって競争を促進するための措置が講じられ、Enelは1992年に持ち株会社となり、事業部門ごとに解体された。電力輸入と発電部門では、1企業の市場シェアに50%の上限が課せられ、Enelは1,500万kW相当の発電設備を2003年までに売却することが義務付けられた。Enelはこれらの発電設備を新たに設立した3発電子会社に移管し、競争入札により国内外の競合事業者に売却した。これによりEnelの発電シェアは2016年現在、約24%にまで低下している。
送電部門は所有分離
送電部門は、当初、Enelが設備を引き続き所有・管理するものの、その運用は別の国有会社が行うという、いわゆるISO(Independent System Operator)方式が採用された。しかし、2003年に2回にわたり発生した全国的な大停電の後、送電業務を円滑、安全に進めるには設備の所有と運用の一体化が不可欠とされ、2005年からはEnel傘下の送電資産管理子会社Ternaが設備の所有・管理と運用を行うことになった。これに伴い、送電運用の中立性維持の観点からEnelは保有するTernaの株式のほとんどを譲渡することになった。電気事業関連企業は5%以上のTerna株の保有を認められておらず、Enelは2012年初めに保有していた株式すべてを処分し、Ternaとの資本関係を完全に解消した。また卸電力市場の流動化、透明化を図るために、認可された相対取引を除き、すべての電力取引はイタリア電力取引所(IPEX)で行うことが義務付けられることになった。電力取引所の本格的な営業開始は2005年1月からである。
規制料金需要家向けに国有企業が電力を調達
小売りでは、規制需要家のために卸電力市場や相対取引を通じて安い電力を調達し、配電事業者に卸売することを目的とした国有会社である「単一購入会社(AU:Acquirente Unico)」が設立されている。AUは自由化範囲が拡大するにつれて業務を縮小し、自由化の完了と共に使命を終えて解散することになっていたが、全面自由化後も規制料金の存続が決まったことから、2018年現在も活動を継続している。
更新日:2018年9月30日
このページは、社団法人 海外電力調査会の情報をもとに、海外の電気事業についてお知らせするものです。