6. 電気事業体制
部門別に会社化:発電・供給部門は民営化も実施
ロシアの電気事業は従来、1992年に設立された国有電力持ち株会社のロシア単一電力系統社(RAO UES)を中心とした体制であった。しかし、2001年の政府決定に基づき事業改革が開始され、2008年7月、RAO UESの解散で一段落した。その間に部門別分離(アンバンドリング)が行われ、送配電・系統運用、水力発電、火力発電および小売供給の各部門に事業会社が設立された。また、RAO UES傘下に入らなかったイルクーツクエネルゴ社等の電気事業者についても、政府方針に沿った再編が行われた。
送電、配電はロシア・グリッド1社に統合
送配電・系統運用部門では、系統運用会社(SO EES、全国の給電指令所を所有)、連邦送電会社(FSK EES、基幹送電網を所有・管理)、MRSKホールディング(配電持ち株会社)が置かれた。このうち、SO EESについては株式の100%を政府が保有している。一方、配電部門は、設備の老朽化に伴う設備投資需要が高く、業務の効率化が求められていたため、2012年5月に送電部門と統合する方針が決定された。最終的に、MRSKホールディング社はロスセーチー社(ロシア・グリッド)と改称され、同社がFSK EESを傘下に置くこととなった。ロスセーチー社(88.04%政府保有)は2013年4月に再編手続きを完了し、2018年初現在、FSK EES株の約8割を保有している。火力、小売供給部門は民営化
火力発電部門と小売供給部門は民営化された。火力発電部門では大規模火力で構成される卸発電会社(OGK)6社、中小規模火力で構成される広域発電会社(TGK)14社に分割・民営化された。民営化には欧州大手電力会社も参入し、独E.ONがOGK-3(その後E.ONロシア、続いてユニプロに改称)、伊EnelがOGK-5(同Enelロシア)、さらにフィンランドFORTUMがTGK-10(同FORTUM)をそれぞれ取得した。その他のOGK・TGKは国有ガス会社・ガスプロム社などの国内大企業や国有電力会社が取得したため、グループ化が進行し、発電会社の再編が進められている。水力発電会社ルスギドロ社については政府が過半数株(60.6%)を保有している。また、電力輸出入会社インテルRAO UES(インテル社)については、複数の政府系企業が主要株主となっている。同社はもともと電力輸出入に携わる事業者として発足したが、現在は各地の発電会社や小売供給会社を傘下に置いた総合的な電気事業者として運営されている。
例外的に極東地域では垂直統合型が維持されており、株式会社・東部電力系統社(RAO ES Vostoka)が、事実上、政府管理下(ルスギドロ社の管理下)で電気事業を統括している。
小売供給部門は、RAO UESの子会社であった地方電力から分離・設立された小売供給会社を中心に、いわゆるラストリゾートである供給保証事業者(GP)の資格が与えられ、その他の販売会社とは区別されている。GPは供給区域を持ち、区域内の需要家の供給申請に対しては受入義務がある。GPには地方電力由来の事業者のほか、鉄道や産業用に電力を供給していた会社なども指定されている。その他の販売会社は、改革以降に設立された企業が中心で、家庭用供給を除き自由に契約も価格設定もできる。2015年現在、GPは全国に約400社を数える。
系統運用
系統運用はSO EESが担当している。全国系統のロシア単一電力系統(EES)は、7統合電力系統(OES:北西、中央、南部、中ボルガ、ウラル、シベリア、東部)から成り、それぞれの統合電力系統は複数の地方電力系統(RES、全国に69)から構成される。SO EESの中央給電指令所、統合給電指令所、地方給電所がそれぞれEES、OES、RESの運用を行っている。東部を除く6つのOESは同期連系されており、また、隣国のベラルーシ、エストニア、ラトビア、リトアニア、ジョージア、アゼルバイジャン、ウクライナ、モンゴルと、さらにカザフスタン経由で中央アジアのウズベキスタン、キルギスとも国際連系されている。更新日:2018年9月30日
このページは、社団法人 海外電力調査会の情報をもとに、海外の電気事業についてお知らせするものです。