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[世界]「原子力エネルギー・サミット」初開催 原子力の役割を再確認

2024年4月5日

ベルギー・ブリュッセルで3月21日、国際原子力機関(IAEA)とベルギー政府の共催による「原子力エネルギー・サミット」が開催された。原子力に特化した史上初の首脳会議であり、国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長とベルギーのアレクサンダー・ドゥ=クロー首相が共同議長を務めた。

30か国以上の首脳や閣僚、300名以上の原子力関係者らが出席し、化石燃料の使用の削減、エネルギー安全保障の強化、持続可能な開発の促進という世界的な課題に対処する上で、原子力が果たす重要な役割を再確認した。

このサミットは、2023年12月にドバイで開催された第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)の成果文書でCOP史上初めて、炭素排出量を削減するための重要なアプローチの1つとして「原子力」が明記され、他の低炭素エネルギー源とともに原子力導入の加速が求められたことを受けて開催された。

IAEAのグロッシー事務局長はサミットの開始にあたり、「原子力のタブーは終わり、原子力へのコミットメントの新たな章が始まった。クリーンなエネルギーへの移行は、グローバルな取り組みであり、世界は私たちが行動を起こすことを必要としている」とし、国際金融が原子力に資金を提供し、安全、確実かつ核不拡散に取り組みながら原子力の拡大を目指す、と語った。ベルギーのドゥ=クロー首相は、自国の政策変更(脱原子力から運転延長へ)に言及し、ネットゼロ目標を達成するためには、再生可能エネルギーとともに原子力をエネルギーミックスにとり入れる必要があるとの認識が高まっている、と述べた。

出席した各国首脳や閣僚による一連のスピーチでは、エネルギー安全保障と脱炭素エネルギーの必要性が頻繁に言及されたが、国際エネルギー機関(IEA)のファティ・ビロル事務局長は、記者団に対し、「原子力発電なしには、気候変動に関する目標を予定通りに達成することは不可能」と強調した。

欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は、欧州連合(EU)内では原子力について異なる見解があるとしつつも、気候変動問題への取り組みの緊急性から原子力は重要な役割を果たすべきであり、既存の原子力発電所の運転期間延長ではなく閉鎖を考えている国は、容易に利用可能な低排出エネルギー源である原子力を除外する前に、安全性の確保を条件にその選択肢を慎重に検討すべきであると語った。また、小型モジュール炉(SMR)を支援する国や企業による世界的な競争の拡大を歓迎し、技術革新を奨励した。

大規模な原子力拡大計画を持つフランスのエマニュエル・マクロン大統領は、原子力は排出削減、雇用創出、エネルギー安全保障の強化を同時に達成する唯一の方法であると述べ、今回の新たな国家間の結束を歓迎し、エネルギー効率の改善と再生可能エネルギーならびに原子力の拡大が必要である、と述べた。

日本の岸田文雄首相のメッセージを代読した高村正大外務大臣政務官は、経済成長とエネルギー安全保障を両立させるネットゼロ達成のため、クリーンエネルギーである原子力を再生可能エネルギーとともに可能な限り導入し、原子力への投資を促進する戦略を練ることが不可欠とした。なお、原子力の活用にあたっては、福島第一原子力発電所事故の教訓を活かした、原子力の安全確保が大前提である、と語った。

米国のジョン・ポデスタ大統領補佐官(クリーンエネルギー、イノベーション担当)は、COP28で各国が約束した「2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍に拡大」させることは、米国では2億kWの設備容量拡大を意味するが、既に準備に着手しており、世界各国の原子力発電所の建設を支援することで、気候変動の危機への対処を目指す、と述べた。

なお、各国首脳や閣僚による一連のスピーチの後、イノベーションが原子力の競争力、利用可能性、持続可能性をどのように高めていくか、また、原子力プロジェクトの資金調達とその公平な競争条件を確立するための課題についてなど、専門家によるパネルディスカッションが行われた。

サミットに出席した各国首脳らは、電力と産業の両部門から温室効果ガス排出量を削減し、エネルギー安全保障を確保しつつ、長期的な持続可能な開発とクリーンなエネルギーへの移行を促進するための重要な要素である、原子力に対する強いコミットメントを再確認し、原子力の拡大を呼びかける共同宣言を採択した。

共同宣言によると、国家間の協力を強化し、2050年までにネットゼロを達成するために、今後10年間で行動を加速する。具体的には、既存原子炉の運転期間延長、新規建設、SMRを含む先進炉の早期配備を支援する条件整備など、原子力の潜在力を完全に引き出すために取り組むほか、技術革新によって原子力発電所の運転性能、安全性及び経済性の向上、世界の原子力産業及びサプライチェーンの強じん性及び安全性の強化を図り、各国間の協力促進のため、原子力開発のための公正で開かれた世界的な市場環境を構築するとしている。さらに、国際金融システムにおける環境・社会・ガバナンス政策に対し、オプションとして原子力を含めることを求め、多国籍の開発銀行、国際金融機関などに原子力プロジェクトへの融資支援を強化する検討を行うことや、あらゆるゼロエミッションエネルギー源に対する資金調達での公平な競争条件の確立に支援を求めるとしている。最後に、「IAEAが加盟国と協力して、脱炭素化に向けて原子力への支援を構築し続けるために、しかるべき時期に次回の原子力エネルギー・サミットを開催することを歓迎し、支持する」と結んでいる。

なお、このサミットでは、世界の原子力産業団体(日本原子力産業協会など計7団体)が気候変動対策とエネルギー安全保障の目標達成に向けて、原子力発電を拡大するという各国首脳のコミットメントを歓迎し、これに協力することを表明するとともに、産業界がその役割を果たすのに必要な政策の枠組みについて提言する共同声明を発表している。

【情報提供:原子力産業新聞】 

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